難治性の慢性咳嗽
患者像

CASE3

55歳 女性(架空のものです)

監修

亀井内科呼吸器科医院 院長

亀井 雅先生

CASE3
職業主婦
家族アレルギー疾患なし
喫煙歴なし
ペットなし
BMI26.0
アレルギーなし
咳嗽持続期間3ヵ月(乾性咳嗽)
併存疾患咳喘息(咳過敏状態)
胸部X線異常なし
喘鳴なし
%FEV1(%)99.0
喀痰なし

経過/様子

  • 3ヵ月ほど前から昼夜問わず1日中咳が続くようになった。
  • 画像検査で異常がなかったので、重大な呼吸器疾患や感染症の疑いはないと考えられた。
  • 呼吸機能の異常や喘鳴、痰は認められず、ICS/LABAで夜間の咳は改善したことから咳喘息と診断された。
  • ICS/LABAを2ヵ月間続けたものの日中の咳は残存し、その後ICS/LABA/LAMAにステップアップしても咳の状態に変化はなかった。
  • 自覚症状として常に咽喉頭のイガイガ感があり、1度咳が出始めると止まらなくなることがある。
  • 外出中も自分では咳がコントロールできない時があるので、周囲から新型コロナウイルス感染症と思われるのではないかと気になっている。

監修医師からのコメント

亀井内科
呼吸器科医院
院長
亀井 雅先生

日常診療においては実施可能な検査が限られており、すぐには慢性咳嗽の原因が判断できないケースも多いかと思います。そのような場合は、『喘息診療実践ガイドライン2022』に記載されている“「狭義の」慢性咳嗽診断のためのチェックリスト(成人)”の項目に沿って患者さんの状態を確認し、ICS/LABAなどの効果の有無によって診断することが推奨されています。
本caseの患者さんは、ICS/LABAによって夜間の咳に効果が認められ、咳喘息と診断されましたが、その後ICS/LABA/LAMAまで吸入しても日中の咳は軽快しませんでした。
このような慢性咳嗽患者さんで注目するべきなのは、咳以外の患者さんの自覚症状です。「常に咽喉頭のイガイガ感があり、1度咳が出始めると止まらなくなる」という咽喉頭の自覚症状があり、「自分では咳がコントロールできない時がある」ことから、わずかな刺激でも咳が出てしまう咳過敏状態の典型的な兆候とみられます。これは難治性の慢性咳嗽と判断するための、問診の重要なポイントと考えます。
また、本caseは咳喘息に着目した患者さんでしたが、慢性咳嗽の主な原因としては他にも胃食道逆流症や鼻副鼻腔疾患(アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎)による後鼻漏も挙げられます。可能な範囲で、それらの原因疾患も考慮することも大切です。

ICS:吸入ステロイド薬
LABA:長時間作用性β2刺激薬
LAMA:長時間作用性抗コリン薬