病態

発生機序

咳嗽は様々なメカニズムが関与していま1)

咳嗽とは、気道内に貯留した分泌物や吸い込まれた異物を気道外に排除するための生体防御反応です。その発生機序には、迷走神経を求心路とする不随意的な咳嗽反射と、大脳が関与する随意的な咳嗽反応(咳衝動など)が複雑に関与しており、延髄の咳中枢に刺激が伝達されることで咳嗽が生じます。

求心経路

咳嗽反射の求心経路には2つの経路がありま1)

咳嗽反応の求心経路には、気道壁表層に存在する咳受容体を介する経路(A)と気道壁深層の平滑筋収縮を介する経路(B)の2つがあります。
病的な状態では、気道壁表層の咳受容体(求心性Aδ線維またはC線維)の感受性が亢進し、弱い刺激で咳嗽が発生します。気道壁深層の咳受容体はAδ線維と想定されており、平滑筋収縮により刺激されることで咳嗽が発生します。この咳嗽は平滑筋の収縮を有する気管支喘息や咳喘息に特徴的で、咳喘息では気管支平滑筋収縮に対する咳受容体の感受性が亢進しており、わずかな収縮によって咳嗽が発生します。

P2X3受容体

新たな咳嗽のメカニズムとして、P2X3受容体の関与が明らかになっていま2)-8)

近年、咳嗽メカニズムとしてP2X3受容体が関与していることが明らかとなりました。
P2X3受容体は、気道の迷走神経のC線維上にみられるATP依存性イオンチャネルで2)3)
C線維は炎症又は化学刺激物質に反応して活性化されます。ATPは炎症条件下で気道粘膜細胞から放出されます。細胞外ATPのP2X3受容体への結合は、C線維による侵害シグナルとして感知され、C線維の活性化は、患者が咳嗽の衝動として感じ、咳嗽反射を惹起させると考えられています。

文献

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